ホーム > 健康豆知識 2019 Vol.13 メタボリックシンドローム
【健康豆知識】 2019 Vol.13
メタボリックシンドローム
 内臓脂肪の多い方が、高血圧・高血糖・脂質異常となる状態のことで、予備軍を含めると40~74歳では男性の2人に1人、女性の5人に1人が該当すると言われています。(約1,940万人)
 検査値が異常になる前から生活改善を心がけて、動脈硬化の進行にブレーキをかけ、生活習慣病を未然に防いでいくことが大切になります。
メタボリックシンドロームとは
  内臓脂肪が多くて糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳などの血管の病気につながりやすい状況をいいます。
 具体的には高血圧、脂質異常症、肥満などは、糖尿病の発症や心臓や血管の病気につながりやすく、こうした生活習慣病の前段階を包括して、メタボリックシンドローム(メタボ)といいます。
メタボリックシンドロームの危険性
  メタボリックシンドロームの危険性は、自覚症状がほとんどない点にあります。本人はとても元気で病気のことは頭にありませんし、生活習慣が好ましくないと いうことも認識していません。しかしこの間にも動脈硬化はどんどん進行しているのです。
 こうして本人が気づかない、あるいは無関心でいるうちに、動脈硬化が進行して、ある日突然心臓発作や脳卒中をおこし、そのまま死への道をたどる人も少な くありません。たとえ助かっても後遺症をのこし、寝たきりになったり介護が必要となる不自由な生活を何十年も続けることになります。
メタボリックシンドロームの診断基準
  日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm、女性90cmを超え、かつ血圧・ 高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つに当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
(3つのうち1つの場合は予備軍)
  必須項目における内臓脂肪面積測定時は男女ともに?100cmに相当します。
高トリグリセリド血症・低HDLコレステロール血症・高血圧・糖尿病に対する薬剤治療をうけている場合は、それぞれの項目に含めることになります。
 体格の大きな男性よりも小さな女性の基準値ほうが大きくなっているのはなぜか、という疑問がよくあります。これは女性は男性に比べて皮下脂肪がたまりや すく、同じ量の内臓脂肪がたまっていても皮下脂肪の分だけウエスト周囲径が大きくなるからです。
メタボリックシンドロームの原因
1. 動脈硬化
 メタボリックシンドロームになると、たまった内臓脂肪 から脂質がたくさん放出されます。その結果、中性脂肪の増加や善玉のHDLコレステロールの減少を まねき、動脈硬化が進行します。
2. アディポサイトカイン
 メタボリックシンドロームの原因である内臓脂肪が蓄積 すると、脂肪細胞が肥大・増殖し、アディポサイトカインの分泌異常が起こります。これが動脈硬化を 促進し、糖尿病・高血圧・脂質異常症を発症させ、悪化させる原因です。
メタボリックシンドロームと関連する病気
1. 糖尿病
 メタボリックシンドロームによって引き起こされる病気 のひとつである「糖尿病」。
内臓脂肪が増えると糖の代謝に異常が生じ、糖尿病を発症するリスクが高まります。
2. 高血圧
 日本人の高血圧の最大の原因は、塩分のとりすぎです。 若年・中年の男性では、肥満が原因の高血圧も増えています。飲酒・運動不足も高血圧の原因です。高 血圧は喫煙と並んで、日本人にとって最大の生活習慣病リスク要因です。
3. 脂質異常症
 内臓脂肪が増えると、血液中の中性脂肪の増加とHDL コレステロールの減少を招き、動脈硬化を起こします。LDLコレステロールは内臓脂肪の蓄積 との関係は低いのですが、LDLコレステロールが高値になるとさらに動脈硬化が促進されます。
4. 虚血性心疾患
 メタボリックシンドロームによって動脈硬化が進行する と、虚血性心疾患を招く恐れがあります。代表的な虚血性心疾患(心臓病)には、狭心症と心筋梗塞が あります。
5. 脳血管障害(脳卒中)
 脳血管障害(脳卒中)には、脳の血管が詰まる脳梗塞 と、脳の血管が破れる脳出血・くも膜下出血があります。いずれも高血圧が最大の原因です。
メタボリックシンドロームの予防・改善
 メタボリッ クシンドロームの予防・改善に は、過食と運動不足を解消して、内臓脂肪を減らすことが大切です。過食になりがちな食生活を改め て、積極的に体を動かし適度な運動を日常生活にとりいれ る、この2点がメタボリックシンドローム改善の柱になります。
 メタボリックシンドロームの改善には、まずは体重の5%を減量することを目標としましょう。それだけで内臓脂肪は減りますし、高血圧・高血 糖・脂質異常も改善し、アディポサイトカインの分泌も正常に近づきます。
1. 食事
◯減量のための食事
  3~6ヵ月で体重の5%を減量する目標を達成するには、食事で摂取するエネルギーを運動で消費するエネルギー以下にすることが基本です。食事を減らしても 栄養バランスをくずさないようにし、早食い・間食・夜食などの内臓脂肪をためる食習慣を改めましょう。  
 例えば60kgの体重の方が3ヶ月で5%の減量を目的とした場合、1kg減量するには約7,000kcal摂取カロリーを減らさなければなりませんの で、
 60kg×5%×7,000kcal=21,000kcal
の減量が必要となります。この数値だけ聞くとかなりの量に感じますが、一日あたりで計算すると、
21,000kcal÷90日(約3ヶ月)=233kcalとなります。
 1日の摂取エネルギーは通常、男性2,000~2,200kcal、女性1,800~2,000kcal前後ですので、そこから10%ほど減らせばよい ことになります。

◯実践してほしい食習慣
  減量のために食事量を減らすとき気をつけていただきたいのは、必要な栄養素が不足しないように栄養バランスを考えることです。そして肥満や内臓脂肪蓄積に つながりやすい食習慣をしてはいないかです。次のようなことがあったら、ぜひ改めてください。
2. 運動
 日常生活の中で、積極的に体を動かす・軽めの運動を続 ける・筋肉を鍛える運動をとり入れる、この3つを習慣的にすることが大切です。 1日の消費エネルギーを増やし、基礎代謝を高め、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回ることで、メタボリックシンドロームの予防や改善につながります。
◯生 活活動で体を動かす
 まず日常生活の中で積極的に体を動かすことが大事です。できるだけ通勤時乗り物は利用しないで歩く、エスカレーターやエレベーターは使わないで階段 を昇る、家でも職場でも他人に用を頼まず自分でするなどの積み重ねが、内臓脂 肪を減らすのに大きく役立ちます。

◯軽めの運動をする
 ウォーキング・軽いジョギングなど軽めの運動で結構です。体にたまった脂肪を減らすには、息が切れるような激しい運動は不適 当で、呼吸が十分できる程度の運動(有酸素運動)が良いと言われています。 注意したいのが普段運動習慣がない方がいきなり無理をして怪我をすることです。段階を踏んで強度を上げていくことも大切です。
 下表は1エクササイズがどの運動に値するかを示した表です。運動と生活活動がどのくらいの強度かを知る参考になります。 厚生労働省が勧めるエクササイズガイド2006では、週23Ex(エクササイズ)以上の活発な(3Mets以上)身体活動が生活習慣病予防に効果的だとし ています。 歩行であれば毎日8,000?10,000歩歩くと、週23Exを達成できます。また週23Exのうち、4Exは運動を実施することを推奨しています。

厚生労働省「健康づくりのための身体活動2013」より引用
◯筋肉を鍛える
 基礎代謝を高めるには、ある程度強度のある筋肉を鍛える運動が必要です。比較的簡単にできる筋肉を鍛える運動としては、クランチ(腹筋群)・フォワード ランジ(下肢筋群)・プッシュアップ(上肢筋群)などがあげられます。
特定健診・特定保健指導
 平成20年(2008年)4月から「特定健診・特定保 健指導」が始まりました。これは40歳~74歳のすべての国民に対して年1回の健診を行い、その結 果を踏まえて保健指導を行うことを健康保険組合などの医療保険者に義務づけたものです。これまで機会があってもあまり健診を受けなかった、家庭の主婦など の扶養家族や自営業などの人たちも全員が受診することを目指しています。
 先に上げたメタボリックシンドロームの診断基準と保健指導の選定基準は違います。特定健診・特定保健指導は、生活習慣病の予防を目的としていますので予 防効果を高めるために、メタボリックシンドロームの診断基準より厳しい基準となっています。 お腹周りでセーフと思っていてもBMI(体格を見るための指標)、喫煙の条件も加わり、血糖値の条件も少し厳しくなっています。
 健診結果にもとづき、メタボリックシンドロームの人には「積極的支援」、その予備 群には「動機づけ支援」、さらにリスクのない人を含むすべての受診者に「情報提供」が行われます。
 「積極的支援」では、自分自身の健康状態をよく認識してもらい、どうしてそういう状態になったのか運動や食事など生活習慣との関係を理解して もらい、自分で生活習慣の改善を実行できるよう、医師や保健師・管理栄養士らとともに計画を立て、3~6ヵ月にわたる指導・支援が行われます。
 「動機づけ支援」では、同様に現在の自分の健康状態と生活習慣との関係などをよく理解してもらい、生活改善を実行する動機づけのめたの指導が 原則1回行われます。
 「情報提供」では、メタボリックシンドロームを予防し、健康を維持・増進するために、どのような生活習慣を続けたらいいかを正しく理解するた めの情報などが提供されます。 特定健診・特定保健指導は以下の基準に基づいて選定されています。


厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「特定保健指導の実施基準・判定方法」より引用
 今回はメタボリックシンドロームについてご紹介しました。メタボリックシンドロームの予防・改善を行えば生活 習慣病、特に糖尿病のリスクが低くなります。
  特定健診・特定保健指導は市町村でも行っています。(期間がありますので詳しくは市町村窓口でご相談ください。)職場で健診を受けられない方は受診をして健康づくりに役立てていきましょう。