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Vol.15

残薬は薬の適正使用や医療費の観点から社会問題の一つ となっており、厚生労働省の資料によると、残薬の金額は高齢者だけでも年間約475億円になると言われています。専門家の分析によると1000億円以上の残薬があるとも言われています。
<引用>けんぽれん
医療費削減のために!大切なお薬の話
薬が適切に服用されていないと十分な治療効果が得られず、体に良くない状況となってしまったり、治療期間が延長してしまうことがあります。
また、ご自宅に残薬があると、飲み間違いや誤飲の原因となってしまいます。


残薬とは

残薬とは、病院や薬局から薬をもらい、飲み忘れやご自身の調整によりご自宅に残ってしまった薬のことです。ご家族や介護職員の方、在宅訪問の薬剤師が残薬に気が付くことも多くあります。

残薬の原因

 残薬が発生する主な原因や理由は次のようなことがあげられます。
 ・飲み忘れや飲む量、回数の間違いがある。
 ・患者様自身の不安や自己判断により、薬の数を減らしたり服用を中止したりする。
 ・服用時間が生活習慣にあっていない。
 ・薬の管理ができていない。
 ・残薬があると言うと怒られるかもしれない不安や、失礼だと思うため相談しにくい。

残薬がある場合どうしたらいい?

残薬の中で今も継続して服用している薬があれば、病院の診察前に何日分余っているか数えます。 そして診察時に医師に余っていることを伝え、処方日数を余っている分減らしてもらうようにしましょう。 一度受け取った薬剤は、後から減らしたり、返品することはできませんが、このように事前に伝えて減らしてもらうことで患者様自身や、国の医療費の削減になります。
また別の方法として、薬局に行った際に余った薬を持っていき、薬局の薬剤師から医師に連絡して、余っている分の薬を減らしてもらうこともできます。 こちらの場合でも、調整した分の医療費削減になります。医師から処方された薬を服用していなかったことを伝えるのを嫌がる患者様もいらっしゃいますが、薬局で相談されれば言いにくいと思うことも避けられます。
医師は処方した薬をしっかり飲んだ上で今の状態であると診断します。何も言わないまま症状が悪化した場合、その症状を改善するために、さらに薬を追加されてしまうこともあります。 それによって服用する薬がどんどん増えて、かえって体調が悪化したり、副作用が生じたりする場合もあります。まずはきちんと伝えて、日数調整をしてもらいましょう。

薬局での残薬解消に関する主な取り組み

薬局では以下のような取り組みを行い、残薬を減らすことを推進しています。

1. 一包化

一包化とは、服用時点が同じ薬や1回に何種類かの錠剤を服用する場合などに、それらをまとめて1袋にすることです。1回にまとめることで飲み間違いや錠剤の紛失がなくなります。
また、薬の入っているPTPシートが硬くて薬がうまく取り出せない場合など、手が不自由な方にも便利です。

2. お薬手帳

お薬手帳は、みなさまが使用しているお薬の名前や使い方などに関する情報を、過去のアレルギーや副作用の経験の有無と併せて、経時的に記録するためのものです。 現在ご使用中のお薬はもちろん、過去に使用されたお薬の情報が手帳に記録されているので、いつでもご自身のお薬に関する情報を容易に確認することができます。 また、診察や調剤を受ける際に、医師や薬剤師にお薬手帳を提示していただくことで、お薬の重複や飲み合わせのチェック、アレルギー歴や副作用歴の確認などが可能となるので、残薬が多くなることのチェックもできます。

これまでは、紙のお薬手帳が主流でしたが、そこに電子版のお薬手帳が加わりました。
電子お薬手帳は、みなさまのお手持ちのスマートフォンなどに、お薬の情報を保管し、紙のお薬手帳と同様に活用するために作られたものです。 電子版ですので、情報をクラウドに保管し、万一の災害時など、さまざまなシーンでの利用も期待されています。 スマートフォンと連携していますので、飲み忘れ防止アラーム機能を装備するなど、紙のお薬手帳には無い機能も提供されています。 ここでは、(公社)日本薬剤師会が提供する「日薬eお薬手帳」をご紹介しています。

※外部サイトへアクセスします(新しいウィンドウ、又は新しいタブで開くようになっています)

3. お薬カレンダー

壁に掛けることができるカレンダーにポケットが付いている構造になっており、薬を飲むタイミング毎にポケットに薬剤を入れて準備しておき、順番に飲んでいくと飲み間違いや飲み忘れを防げるというのが特徴の道具です。
最も一般的なものは、壁に吊るしたカレンダー上部に、横に「朝・昼・夕・寝る前」というように一日のうちの服用タイミングが表示され、左側には縦に「月・火・水・木・金・土・日」というように曜日が表示され、一週間分のポケットが碁盤の目のように配置されています。

4. かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局

ひとりの薬剤師がひとりの患者さんの服薬状況を一カ所の薬局でまとめて管理し、それを継続して行ないます。薬を安全・安心に使用していただくため、処方薬や市販薬など、あなたが使用している薬の情報を一カ所でまとめて把握し、薬の重複や飲み合わせのほか、薬が効いているか、副作用がないかなどを継続的に確認します。 同じ薬剤師・薬局で管理できるので残薬調整もスムーズですし、相談もしやすくなります。

5. 在宅訪問

在宅での療養を行っている患者さんであって通院が困難な方に対して、処方医の指示に基づき、作成した薬学的な管理計画の基、患者さんのお宅を訪問して、薬歴管理、服薬指導、服薬支援、薬剤の服薬状況・保管状況及び残薬の有無の確認などを行い、訪問結果を処方医に報告することまでを含む業務をいいます。 対象者が要介護認定を受けている方の場合は、ケアマネジャーにも訪問結果の概要を情報提供します。
 訪問する頻度はお薬を持参するとき(週に1度~月に1度)はもちろん、服薬状況を確認するためや、すでにお届けしてあるお薬をお薬カレンダーへ配置するために、お薬を持参しないで訪問する場合もあります。 患者さん宅に訪問して薬の確認ができるため、残薬を減らす効果は大きいです。

残薬調整で患者様に注意してほしいこと

1.残薬確認や相談には、持参した残薬等だけでなく薬局が持つ過去の記録も使用します。 できれば普段調剤を受けているかかりつけ薬局でお薬手帳を準備してお願いしましょう。 また、薬局によっては残薬相談の時間や方法等が決まっている場合もあります。

2.薬局で残薬を回収できる場合もありますが、薬局で回収した薬を他の方に使うことはありません。 また、薬の種類によっては薬局で回収できないものもあります。

3.薬を買い取ったり、返品・返金できるわけではありません。調剤薬局では、処方箋に基づき調剤し、薬をお渡ししています。 この行為は、単なる商品の売買ではなく、健康保険法上で「療養の給付」に関わるものとして、診察や治療と同様に位置づけられています。 既に行われた診察や治療を、さかのぼって無かったことにできないのと同様に、調剤薬局で「療養の給付」として渡した薬も、返金できる性質のものではないと解釈されています。

今回は調剤薬局で重要な仕事の1つである残薬についてご紹介しました。薬は用法・用量を守って正しく服用することが大切です。薬についての不安や管理で困ったことがあれば、遠慮なく薬局にご相談ください。